飲酒運転で交通事故を起こしたら保険金は支払われない?

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自動車保険 安全運転と保険

飲酒運転は社会の機運の高まりなどにより厳罰化が進み、飲酒運転による交通事故の件数も年々減少しています。しかし、数は減っているとはいえいまだに飲酒運転による事故が起こっているのも事実です。

飲酒運転による交通事故が発生したときに問題になるのが保険の扱いです。通常、交通事故が発生したときの相手方への賠償は自賠責保険や任意保険で補償され、自分の車や身体に生じた損害は車両保険や健康保険の適用対象となります。

しかし、飲酒運転による事故の場合はこれらの保険による補償は行われるのでしょうか。この記事で詳しく解説いたします。

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飲酒運転による免責とは

保険契約には、通常、約款等において「免責事由」が定められています。免責事由とは、保険会社が保険金等の支払いを免れる事由のことをいいます。

「免責」とは「責任を免れる」という意味ですが、ここでは「保険会社が保険金を支払う責任を免れる」ということを意味します。つまり、交通事故が発生しても、免責事由に該当するときには保険金は支払われず自腹で負担しなければいけなくなります。

任意自動車保険においては飲酒運転は免責事由に該当します。細かい文言は保険会社によって異なりますが、保険約款には「道路交通法第65条第1項に定める酒気帯び運転もしくはこれに相当する状態」での運転中の事故は免責事由に該当すると規定されていることがほとんどです。

「道路交通法第65条第1項に定める酒気帯び運転」とは、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15ミリグラム以上の状態をいいます。

たとえば事故直後の警察による捜査においてアルコール検査が行われ、酒気帯び運転と判断された場合には、道路交通法違反として刑事罰の対象となることはもちろん、保険の適用においても不利益が科される可能性が高くなります。

自分でできるアルコールチェッカーは下記のようなものがあります。

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飲酒運転と自動車保険の種類との関係

自動車保険には自賠責保険と任意保険があり、任意保険はさらに対人賠償保険、対物賠償保険、車両保険に分かれます。また、怪我や病気をしたときに補償を受けられる健康保険、医療保険、生命保険もあります。

飲酒運転で交通事故を起こした場合、これらの保険による補償はなされるのでしょうか。

自賠責保険

自賠責保険とは、交通事故で怪我を負った被害者に最低限の補償を行うことを目的とした強制加入保険で、加害者が任意保険に加入していない場合を含め、あらゆる場合に適用対象となります。
したがって、加害者が飲酒運転だった場合にも被害者には自賠責保険から補償がなされます。

任意保険(対人賠償保険、対物賠償保険、車両保険)

任意保険のうち、対人賠償保険と対物賠償保険については飲酒運転の場合でも保険適用の対象となります。飲酒運転は重大な事故に繋がりかねない悪質な交通違反ですが、被害者にとっては相手がたまたま飲酒運転だったという理由で怪我や後遺症、あるいは車の損傷といった損害に対する補償がなされないのは適切ではありません。

そこで、被害者救済の観点から、被害者に対する保険の適用においては加害者が飲酒運転だったかどうかが問われることはありません

他方で、車両保険は飲酒運転の場合は免責事由に該当し、保険の適用対象となります。

車両保険は事故を起こした当事者の車の損傷を補償するものですので、飲酒運転という法令違反により事故を生じさせたことはいわば「自業自得」であり、救済の必要性が乏しいと判断されてしまうからです。

健康保険

健康保険は業務外で怪我や病気をしたときに保険金が支払われるものです。

健康保険法の116条には、「自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由にかかる保険給付は行わない」と定められています。飲酒運転は道路交通法の規定に違反する行為ですので、飲酒により交通事故を生じさせたときには健康保険は支給されず、治療費は全額自己負担となってしまいます

医療保険

医療保険とは、毎月の保険料を支払うことにより怪我や病気による入院や手術の際に給付金を受け取ることができるものです。

医療保険には免責事由として「被保険者の薬物依存、泥酔、犯罪行為、精神障害等で事故を起こし、入院しまたは所定の障害状態となった場合」といった規定が定められており、飲酒運転により怪我や後遺症を負った場合には適用の対象となりません。

生命保険

生命保険とは、死亡や怪我に備えて大勢の加入者が公平に保険料を負担し合うことにより、もしものことが現実に起きたときに給付金を受け取ることができるものです。主に死亡のときのリスクを想定している点で医療保険と異なります。

飲酒運転が原因で死亡した場合、主契約である終身保険は支払われますが、特約である災害死亡保険金は免責事由に該当するため支払われません。つまり、飲酒運転の場合は死亡した際に受け取ることができる金額が減少する可能性があるということになります。

加害者自身に加害者の各保険は適用されないことが多い

以上のように、事故の相手方(被害者)に対する補償は被害者救済の観点から適用される場合が多いですが、飲酒運転を行った本人(加害者)の保険は適用されないことがほとんどです。

また、飲酒運転で事故を起こした車の同乗者についても、人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険等の対象となるのが原則です。ただし運転者が飲酒しているとわかっていて同乗した場合には「同乗罪」として刑事罰が科されることがあります。

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夜間の単独自損事故の場合、飲酒が疑われて保険適用されない場合がある?

ここまで飲酒運転の場合の保険適用の可否について解説いたしましたが、飲酒をしていなくても、保険会社側から飲酒を疑われて保険の適用を拒否されてしまう場合があります。「そんな理不尽なことがあるのか」と思われるかもしれませんが、実はそこまでめずらしいことではありません。詳しくご説明いたします。

事例

たとえば、次のような事例を考えてみましょう。

Aさんは、旧友のBさんと夜の9時から11時まで繁華街の居酒屋で飲食をしました。Bさんはビールを飲んでいましたが、Aさんは車で帰宅する予定だったため、ノンアルコールビールやウーロン茶を飲んでアルコール類は一切口にしませんでした。

その帰り道、Aさんは自宅に向かう交通量の少ない直線道路を走行していたところ、ハンドル操作を誤り、道路左側のガードレールに接触したのち、中央分離帯に衝突しました。幸いAさんに大きな怪我はありませんでした。車は大きく損傷したものの低速なら走行可能な状態で、また自宅まで数百メートルの地点だったこともあり、Aさんはそのまま車を走行させて自宅に帰宅しました。

翌朝、Aさんは警察に事故があったことを連絡して警察官立ち合いのもとで現場検証を行いました。Aさんは車両保険に入っていたため、保険会社に連絡して車の修理費用を請求することにしました。

ところが数か月後、保険会社からAさんに「保険金支払拒否通知」が送られてきました。その内容は、Aさんは飲酒運転をしていたことが強く推測されるため、免責事由に該当し、保険金を支払うことはできないというものでした。

Aさんは事故の夜に飲酒をしていなかったことを主張し、一緒に食事をしていたBさんにも証言をしてもらいましたが、保険会社の主張は覆ることはありませんでした。

飲酒運転が疑われやすいケースとは

いかがでしょうか。

ここでご紹介したのは架空の事例ではありますが、実際には飲酒をしていないにもかかわらず保険会社から飲酒運転の疑いをかけられ、保険金の支払いを受けられなかったというのは珍しいことではありません。

免責事由に該当するという判断を保険会社が行うかどうかは、警察が飲酒運転として検挙するかどうかとは必ずしも関係なく、警察が飲酒運転として検挙しないケースであっても、保険会社が保険金の支払いを拒否することはありえます。

保険会社は保険金の支払いを行う際、支払いの条件を満たしているか、免責事由に該当していないかの調査を行います。これを「保険調査」といいます。保険調査にはいくつかの種目があり、事故時に飲酒をしていなかったかどうかも調査の対象となることがあります。

飲酒が疑われることが多いのは次のような場合です。

  • 夜間の事故
  • 事故直後に警察届がされていない事故
  • 事故状況が不自然な事故

夜間の事故

飲酒は昼間よりも夜間に行われることが多いため、夜間の事故の場合には飲酒の疑いをかけられることがあります。金曜日の夜や忘年会シーズなどに繁華街から住宅地に向かう途中に事故が発生した場合にはさらに疑いが強まるおそれがあります。

もちろん夜間の事故だからといって飲酒運転というレッテルを貼られるわけではなく、いくつかの要素を総合的に考慮して判断されることになります。中でも最も重要なのは次に説明する警察への届出です。

事故直後に警察届がされていない事故

道路交通法で、交通事故が発生したとき運転者は警察に届出をしなければいけないとされています。これは事故による怪我人がいる場合はもちろん、軽微な物損事故の場合でも同様です。

運転者から届出を受けた警察は事故現場に向かい、現場検証を行ったり、運転者に飲酒が疑われる場合には飲酒のチェックを行います。したがって、道路交通法の規定どおりに警察に届出さえしていれば、保険会社も「飲酒の事実はなかったのだろう」と判断する可能性が高まります。

ところが上の事例のように「自宅が近いから」「車が自走できるから」といった理由で警察への届出を怠ると、道路交通法違反になるだけでなく、保険会社に対して「飲酒を隠すために届出をしなかったのではないか」という疑いをかけられるおそれがあります。

事故状況が不自然な事故

事故状況が通常では起こり得ないようなものだった場合、飲酒の影響により正常な判断ができなかったのではないかと疑われるおそれがあります。たとえば事故前に蛇行運転をしていた場合や、走行していた道路とは反対側のガードレールや電柱に接触していた場合などです。

飲酒運転だと疑われないためには

保険会社から飲酒運転の疑いをかけられ保険金の支払いを拒否される事態を防ぐためには、事故直後に必ず警察に届出をすることが重要です。現場検証時に運転者の飲酒が疑われれば必ず警察は飲酒のチェックを行いますし、呼気からアルコールが検知されなけば飲酒していないことを客観的に証明してもらうことができます。

たとえ軽微な事故であっても、事故を起こしたときには必ず道路交通法の規定に従い警察に届出をするようにしましょう。

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最後に

飲酒運転と保険金の支払いについてご理解いただけましたでしょうか。

飲酒運転は重大な交通違反であり、飲酒により交通事故を発生させたドライバーには厳しいペナルティが課せられます。それだけでなく、保険の適用を拒否され、事故によって自分自身に生じた損害を補償してもらうことすらできない可能性が高くなります。

飲酒運転による被害者を発生させず、あなた自身の人生を守るため、飲酒運転は絶対にしないようにしましょう。

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